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札幌支部経営指針委員会 メールマガジン vol.15

2022.10.13(木)

経営指針委員会メールマガジン「月刊 経営指針」9月号
Vol.15(2022年9月30日 発行担当:経営指針委員会 副委員長 三原 広聡)

同友会札幌支部の会員の皆様
このメールマガジンは、札幌支部会員の皆様に月に一度、同友会活動の根幹となる
経営指針成文化運動に関するさまざまな情報をお送りするメールマガジンです。
 今期は第19期経営指針研究会の活動を通して、「経営指針作成ではどんなことをやっているのか知りたい」「もう少し気軽に経営指針成文化に取り組めないか?」といった会員の皆様のご要望にお応えしたプログラムをお送りいたします。

<19期指針研究会も新たなステージに突入です>
4月からスタートした札幌支部第19期経営指針研究会。8月の中間報告会の後は、新たなステージが待っていました。これまで理念やビジョンという「思い」や「覚悟」を中心に議論してきたわけですが、ここからは「具体的に」自社の経営を変えていく段階に入っていきます。つまり、「10年ビジョン」を起点に「経営方針」「中期経営計画」を経て「単年度経営計画」に落とし込む、いわばバックキャスティングで経営の計画を立てていく段階に入っていくのです。数字が苦手な僕(三原)などにとっては、とても大変な作業の連続です。

<報告の準備からして半端ない作業量にビックリ!>
 これまで「経営理念」と「10年ビジョン」を作ってきたのですが、そのためにもシート作成は存在しました。「当社の歴史と自分の歩みシート」、「労働環境分析シート」、社員の「年齢構成・推移表」などです。でも、これらは調べて記入すれば良かったのですが、後半に用いるシートはどれも、記入の際にとことん考え尽くさねばならないものばかり。「理念」「ビジョン」との整合性も問われます。そして量も多いのです。

 9月の研究会で使用するシートをざっと書き出すと、「外部環境分析シート」「自社事業分析シート(内部環境の分析です)」「SWOT」「クロスSWOT」「経営方針検討シート」「経営方針シート」となんと6種類もあります。研究生の皆さんは、中間報告会が終わってホッと一息つく間もなく、シートの作成に追われたことでしょう。僕が思い返しても、大変さの山場はこの頃だったなと、しみじみ思います。
 ただ、このシートの多さも「本当に使えて、実践に足る経営指針」を作るためには必要不可欠な作業です。これまで「経営勘」で乗り切ってきた経営を分析に基づく科学的な経営に代えていく第一歩であり、また、「経営理念」に基づき「10年ビジョン」からバックキャスティングして経営計画を策定するための第一歩です。正確な現状認識がないと、大きな判断ミスを犯さないとも限りません。

<研究会で「経営方針」について討論している現場を覗いてきました>
 中間報告会も終わり、メンバー間の信頼も気づいてきた研究生の皆さん。「経営方針」の議論もさぞかし白熱しているだろうという事で、とあるグループの研究会にお邪魔してきました。このグループ、メンバーのスケジュールの都合で2回の研究会を1日で行うというのでまずびっくり!午後12時半からほぼ7時までびっしり6時間以上討論するというのです。ものすごい熱量!三原もこんなことは初めてです。そこで行われていた議論の様子をみてみましょう。

 まず初めに報告したA社長。幾多のシートをしっかり埋めてきていますが、少々「型にはまった」記述が目立ちます。また、このグループでは社員に対してアンケート(社内調査)を行い、社員の意向を把握するというスタイルが敷衍していて、その結果についての説明もなされたのですが…様子見という事なのか、研究生諸氏は静かに聞いている感じです。
 しかし、傍で見ていてSWOTや自社事業分析に書かれていることと、社内調査の結果がどうも乖離しているように思っていたところ、しびれを切らした?サポーターから声が上がりました。

 「社内調査の結果、従業員の満足度が低くてかなり深刻な状況に感じるけど、それについてはどう思っていますか?他の研究生の皆さんはこれで良いと思いますか?」

 呼応するように他の研究生からも質問が飛びます。
「確かにSWOTの「強み」にある『安定したチームワーク』が実現できているようには思えない。社員間のコミュニケーションは取れていますか?」

 A社長は悩み迷いながらシートを作成していたようで、その悩みの源泉がどこにあるのかが自分でも整理されていなかったようです。社員の声を聞くことで満足してしまい、「社員の話を聞けば経営者の話も聞いてくれる」と思っていたのですね。

 他のサポーターからは「A社長の夢、ビジョンが伝わっていないのでは?」という指摘も出ましたが、この社長は他のメンバーも認める努力家で、熱意も人一番!まわりの研究生がフォローしながら、再チャレンジの背中を押していました。
 お互いのシートを読み込み合うことで、新しい気づきが生まれて、本当に対処しなくてはならないことが浮かび上がってくる…そんな指針研究会らしい一幕に出会うことができました。

<若者に真剣に向き合う>
 さて、社内の若手にそっぽを向かれたというA社長ですが、周りのメンバーが議論を深めてくれます。

B社長「若い人にきちんと目標を設定してもらう必要があるのでは?うちの社員調査では若手から『到達すべきスキルと、その時期が知りたい』という意見がでていました。いま、それを冊子にまとめているところです。」

A社長「今の若者の8割は出世したくないという調査もあります。」

D社長「若手からはプライベートと家族を大切にしたい。と言われます。スマホの影響かもしれませんが、彼らは会社に依存していない気がします。あと、老後は心配とみえて投資には関心があるようです。」

C社長「褒められることって大切です。技術を学んで、それを褒められる。誰かが見ていてくれないと頑張れないですよ。」

D社長「うちの会社は『小さなチームの組織つくり』に傾注しています。チームワークを理解している人が、次のステップに上がるのです。」

(以後、しばしチームワークについての意見交換)

A社長「自分はチームワークという言葉を誤解していたかもしれません。方針を書き直そうと思います。」

 さすがに異業種から集まった経営者だけに、情報も人によって様々。一つ一つの発言が勉強になります。A社長も経営方針の内容を充実させて、実践に移すにはもう少し社員との対話が必要だと納得していました。

<10年ビジョンを方針にきちんと反映させる>
 C社長は経営理念作成当初から自分の進みたい方向性をしっかり表現していました。それが経営方針を作成すると少々ブレ気味に…

ここでは、C社長がこれまで表明してきた自分らしさ、やりたいことを他の研究生が思い出させてくれました。経営方針策定時に、なぜか急に自分の想いと離れて行ってしまうことが良くあります。それは、この時点で具体的な目標数字や時期を明らかにしなくてはならないことと無関係ではありません。多くの研究生がビジョン実現の道筋を深堀できずに、代替案を書いてしまいがちです。結果、経営方針とビジョンが離れ離れになってしまうのです。
 今回は、周りの研究生の指摘でC社長もブレを認め、再検討することになりました。このことで、本来やりたかったことを再認識できたのはご本人にとっても良かったと思いました。

<外部環境分析ってみんなでやると精密になっていくよね>
この日はこのまま残りの2名も発表、討議して6時間以上のセッションがあっという間に終わりました。その中で改めて思ったのが、ひとつは研究生同士が深いレベルで知り合い信頼し合うことで、議論がものすごい深まり方をするということ、もうひとつが「外部環境分析」は大勢でやればやる程、自分に無かった視点が取り入れられて有益だという事の二点です。取材していた僕にとっても大変勉強になりました。

ちなみにこのグループは研究生相互のスケジューリングの都合で、このように1日に2講をまとめたわけですが、6時間以上の議論にも関わらず、逆にこの方が考えを深められたという話になり、次回も2講まとめて6時間コースでやるとのことです。ちょっとびっくり。

<経営方針の議論を終えて>
 この日はほとんどのメンバーが消化不足という事で経営方針の作り直しを宣言していました。提出シートも増え、取り組みの面でも数字の面でも一段と具体的になる経営方針策定ですが、その前の理念やビジョンとの整合性について深く論じられたのは研究生の皆さんにとって良い議論になったようです。提出シートが多いのも、これからの議論に具体性を持たせ、数字の裏打ちをするために必要不可欠だからなのです。
 この後の経営指針委員会でも、サポーターを中心にここで生じるギャップ(方針策定でいきなり難しくなる、書けなくなるというギャップ)をどうサポートするかを再検討したいとの話が出ていました。サポート体制も進化しています。

この様に、何かと厳しいと言われる経営指針作りですが、多くはこのように研究生自ら望んで深めていくのが実際ですし、同友会のスタイルでもあります。今回もとても良い事例を取材させていただきました。

次回は中期経営計画策定の現場を取材したいと思います。このあたりから数字の裏付けも大切になり、各社とも自社に必要な数値目標を吟味しながらの作業に入っていきます。数字が苦手な経営者も、仲間との議論の中でその要諦を理解していけるようです。以前サポーターをしていた時は、在庫の回転率を指標にしていた経営者もいらっしゃいました。その会社にとって大切な数字は何か?学びはまだまだ深まりそうです。

次回をお楽しみに!

札幌支部経営指針メルマガvol.15(2022年9月号)

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