業況改善続かず 仕入と販売の価格差広がる 同友会景況調査2017年1-3月期
2017.05.17(水)

中小企業家同友会全国協議会と北海道中小企業家同友会が四半期ごとに実施している景況調査結果(2017年1―3月期)がこのほどまとまりました。全国では2308社中952社が回答。うち北海道では516社中163社から回答を得ました。この結果について、北海学園大学経済学部の大貝健二准教授(中小企業論)にコメントを頂きました。(DI値は特に断りのない限り前年同期比、①―④は四半期)
北海道中小企業家同友会2017年第1期(1―3月)の業況判断DI(前年同期比)は、前回調査から5・3㌽の悪化を示しマイナス8・9となった(図1)。前回調査の次期見通しが軒並み悪化であったことを反映した結果となり、16年第3期から3期連続の改善とはならなかった。
全体で見れば悪化を示しているが、業種別には動向が異なる。今期調査で大幅な悪化を示したのは、前回調査で景況感の改善を示していた建設業と製造業であり、今期では建設業で22・0㌽、製造業で14・3㌽もの大幅な悪化を示した。他方、サービス業では17・9㌽もの大幅な改善を示すなど、業種間のコントラストも目立つ(図2)。
次期見通しに関しては、サービス業で悪化、建設業と製造業で改善の見通しであり、今期とは真逆の推移を示す見通しとなっている。
規模別に見たときには100人以上の規模において業況判断、売上高、採算等の各指標で大幅な改善見通しとなっている(図3)。
なぜ大幅な改善見通しとなるのか、実態に基づく検証が必要であろう。というのも、今期調査では仕入単価DIの上昇と販売単価DIの低下に伴い、前回調査まで縮小傾向にあった両DIのギャップは大幅に拡大(図4)しているほか、1人当たり売上高、付加価値(図5)に関しても前回調査から大幅に低下しており、全体としては前期までの景況感の改善は一過性のものであったことが今期調査で示されているからである。
また、今期の経営上の問題に関しては、「従業員の不足」が最も回答割合が高くなっている。これは06年に北海道同友会の独自調査として調査を開始して以来初めてのことである。それだけ正規、非正規を問わず人手不足状況が深刻さを増していることでもある。
新卒採用に関しては今後も売り手市場が続く見通しであり、中小企業では人手の確保は困難を極めることがほぼ確実である。すでに様々な取り組みを展開しているとは思うが、抜本的な対策をもう一度考えていく必要があると思われる。
(執筆:北海学園大学 准教授 大貝 健二)
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