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1世紀企業 町村農場

2017.05.17(水)

牛乳、乳製品でおなじみの町村農場。日本の近代酪農に大きな足跡を残し、今年で100年の節目を迎えました。

創業者の町村敬貴氏は、1882(明治15)年に札幌で生まれます。父の金弥氏は開拓使の役人として札幌市内の官営農場(現在の真駒内公園周辺)に勤務し、その官舎で育ちました。小さな頃から近所の農場に出入りし、牛に魅了された少年の心には酪農家になるという夢が芽生えます。

札幌農学校(現・北海道大学)を卒業した敬貴氏は、1906(明治39)年に酪農の先進地・米国に渡ります。幾多の試練も持ち前のバイタリティーで乗り越え、牧童頭を任されるまでになります。

10年に及ぶ米国での実習を終え、17(大正6)年に石狩市樽川に農場を開きます。しかし、気象条件や土質も良くなく、酪農には厳しい環境。10年にわたる奮闘も実らず、27(昭和2)年に江別市対雁へ移転します。

江別に移っても質の良い牧草を作るため、土壌改良に努力を重ねます。今では当たり前となっている、暗渠や石灰散布を日本で初めて実践的に導入したといわれています。

町村農場では当時、良質な牛を育て、他の牧場に販売することを主としていました。バターも製造し高い評価を得ていましたが、乳製品は経営の柱ではありませんでした。

転機が訪れたのは2代目の末吉氏の時代。酪農を巡る環境変化の中で、牛の販売等だけでは将来見通しが立たないと考え、68(昭和43)年に瓶牛乳の販売に乗り出します。

当初は江別市内での宅配のみでしたが、味の良さが札幌市内の海産物問屋の目にとまり、開業したばかりの札幌地下街にある同社のお土産店に牛乳を置くことになります。

この“牛乳スタンド”は大ヒットし、農場の名を知らしめます。その後、持ち運びしやすい紙パックでの販売を始めるとスーパーやデパート、そして道外へと販路は一気に拡大していきました。

市街化区域の指定に伴い、92(平成4)年に現在の江別市篠津に移転しました。移転に合わせ、牛乳などの加工設備を増強。現在は牛乳、乳製品部門の売上が全体の8割に上ります。2000年代に入ってからは消費者との接点を拡大するため、直営店舗を積極展開しています。

3代目のバトンを引き継いでいる均氏は「時代が流れても“土づくり 草づくり 牛づくり”という創業以来の理念は変わらない」とし、「伝統と技術に裏打ちされた、おいしい製品を提供していくことで、農場の存在感をさらに高めていきたい」と意欲を燃やしています。

(中小企業家しんぶん 2017年5月15日号 シリーズ『1世紀企業』より転載)

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