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札幌支部経営指針委員会 メールマガジン vol.7

2022.01.27(木)

経営指針委員会メールマガジン「月刊 経営指針」1月号
Vol.7(2022年1月31日 発行担当:経営指針委員会 副委員長 三原 広聡)

同友会札幌支部の会員の皆様
このメールマガジンは、札幌支部会員の皆様に月に一度、同友会活動の根幹となる
経営指針成文化運動に関するさまざまな情報をお送りするメールマガジンです。
今回は新春特別企画として、北海道中小企業家同友会 全道経営指針委員会委員長
渡邊幸洋氏のインタビューをお届けします。

<渡邊全道経営指針委員長について>

三原 まずは渡邊幸洋全道経営指針委員長の会社についてお教えいただけますか

渡邊委員長 はい。弊社、渡辺農機株式会社は創業明治41年、現在114年目です。私が5代目の社長になってから14年目になります。社員は12名ですが、農機具製造のメーカーとして農家さんや農協さんの施設で使う機械を提供しています。弊社で作っているのは乾燥機に入れる前後で必要となる機械設備で、例えば穀物に混ざっている茎などを取り除く機械などです。機械そのものは特殊性が高いわけではないのですが、長くやってきているので、経験に裏打ちされたきめ細やかな対応を得意としています。

三原 12名の社員さんはどのような働き方をされているのですか?

渡邊委員長 弊社は少し特殊な部門分けをしていて、生産部と技術部の二つの部署があります。技術部の社員は営業も兼ねていて、お客様のご要望に対して双方の部署が力を合わせて解決するというスタイルでやっています。

三原 なるほど、ありがちな「現場と営業の対立」とかとは無縁そうですね。渡邊委員長が経営指針を始めたのはいつ頃ですか?あと、そのきっかけは何だったのでしょうか?

<経営指針を始めた理由>

渡邊委員長 経営指針研究会には平成21年に代表になってすぐに入りました。
実は交代の前年には経営継続が大変困難な状況になっていて、先代である父とは会社の整理を決意していたのですが、会社の保証をして下さっていた方の計らいでなんとか経営を続けることになりました。それでも経営がすぐに向上するわけではなく、銀行からの新たな借り換えを行うための条件として私が代表者になったという経緯があります。私も経営に携わったことがなく、会社の状況が状況ですから悩みましたし、家族にも反対されました。

三原 奥さんとしては当然ですよね。

渡邊委員長 はい。私が「やめる」と言ったらそれで終わりになる状況ですが、ふと社員のことを考えたのです。うちの社員は狭い世界ではとても優秀だけど、年齢も高いですし、他の企業でも通用するのかなって。彼らの人生がめちゃめちゃになるなって思ったら、怖くて「やめる」と言えなくなりました。そして、先代が言っていた「この会社はやりようによってはまだ続けられる会社だ」という言葉が心に引っかかっていたこともあり、代表になる決心を固めたのです。
さて、いきなり社長になっても何をしなくてはならないかがわかりません。そこで前年に経営指針研究会に誘われていて、お断りした事を思い出したのです。当時は会社に経営理念がないどころか、経営理念という言葉がある事さえ知りませんでした。

三原 実際に経営指針研究会に入ってみていかがでしたか?

渡邊委員長 恐らく、自分がまっさらだったのが良かったと思うのです。研究会ではいろいろな言葉や考え方を吸収していくわけですが、その中でも自分の中にすっと入ってくる言葉と、そうでない言葉をきちんと分けられていたのかなと思います。サポーターの方には「なんでも『はいはい』って聞いていそうで不安だったけど、ちゃんと自分のフィルターを持って聞いているのですね」と言われました。
当時の旭川支部経営指針研究会では経営理念の作成に2回の一泊討論と6回から8回くらいの研究会で3か月くらい掛けていました。そのおかげで「何のために経営しているのか」を徹底して考える事ができたことがとても大きいです。私の場合同期の仲間というより、熱心に指導して下さったサポーターの皆さんや同友会の仲間と出会えた事が良かったですね。

<「労使見解」に対する思い>

三原 日頃の言動を見ていると渡邊委員長は「労使見解」にこだわっていらっしゃる印象があるのですが

渡邊委員長 正直自分の中できちんと「労使見解」を定義付けているとか、同友会的な「労使見解」の考えが身に付いているかというと案外心許ないのです。それでも自分は特別な能力を持っていない、人に頼りながらやっていくしかないという中で、社員が輝いてくれないと会社が立ち行かないわけです。いかに気持ちよく働いていただくかということを考えるようになって初めて「労使見解」的な考えの大切さを話すようになったのだと思います。
でも最初の頃は経営指針をやって「自分が一番勉強している。一番会社のことを考えている。こうすれば会社が良くなるから」と言いながら色々なことをやっていましたが、空回りしていたなと思います。中同協の全国の方と話しても「一度はそういう経験をした方が良いよと(笑)」 そういう気概でやっていくことで見えてくることもあるのだと思います。

三原 全く同じですね。耳が痛いです。「労使見解」の中で渡邊委員長が一番「腑に落ちる」と感じるのはどのあたりでしょう?

渡邊委員長 うーん…「腑に落ちる」と真逆のことを言うと、社員はパートナーというのがまだあまり腑に落ちていないかも知れません。家族という表現をする人もいるけどちょっと違うなという感じを持っていて…社員は社員だろうって。会社を経営する上では掛け替えのない存在であるのは確かですし…私は「労使見解」のどの部分を大切にしているというのは実際無いのかもしれません。
私としては社員に経営理念の話をするときに「自分たち(経営者と社員)が幸せになるために経営している。その中でそれぞれが貢献していくことが大切だ」と言っています。私には「お客様第一」という感覚はなくて、飽くまで自分たちが幸せになるように努力していくことが結果としてお客様や社会に還元していくことに繋がると思っています。その繋がりは自分たちの幸せにも還ってきますから、「日々成長しよう」という理念を掲げているのです。そのためにも社員一人ひとりの「組織の中での居心地の良さ」を考えることはとても大切だと思っています。

<経営指針はハードルが高いのか?>

三原 各支部でも「経営指針がテーマの例会は人が集めにくい、経営指針はハードルが高い」と言われますが、同友会の会員にはどのように伝えて行ったらよいでしょう?

渡邊委員長 そうですねハードルは会員さんの状況や立場によっても受け取り方が違うと思います。ですが、確かに各支部とも年々研究会の参加者が減少しているようですし、旭川では経営者もだんだん若返っている状況もあって、やっぱりハードルは高く感じるのかもしれません。
研究会に関しては、ひとつは期間の長さというのが大きいと思います。その期間続けられるかという心配や、「厳しい事を言われる」といったイメージなどが積み重なってハードルが上がってしまうのでしょうね。ただ、全国に行くともっともっと厳しい話はあって(笑)
宿題をやってこなかったら即その場で参加停止、今年度はもう参加できないとか相当厳しいところがあるようで、北海道の支部に見られる手厚いサポートに対して、全国会議では甘やかしすぎだと言われたりするのも確かです。厳しければよいわけではありませんが、ある程度厳しい中でこそ気付く事もあるということでしょうか。とはいえ最初は打ち込めなくても途中で気付きを得て伸びるという場合もありますから、そこは難しいですね。
取っ付きやすいライトなものの良さというのはあるのですが、同友会の経営指針の場合はそれでは肝要な部分が身に付きにくいと思います。経営指針研究会での対話は心と心のぶつかり合いという面もありますから。外せない部分に関してはぶれてはいけません。
人の考え方も変化しています。経営が苦しい時に入会する方はそれなりに厳しい事も受け入れられるのでしょうけど、今の若い方に対して入口を用意する必要はありそうですね。

<経営指針をめぐる全国の流れ>

三原 先ほど話に出た経営指針の全国会議では現在どのような事が話し合われているのですか?

渡邊委員長 ひとつは中小企業における労働環境の整備ですね。「働く環境つくりの手引き」の普及も含めて、まずここをきちっとしていかなければならないという事。もうひとつは「企業変革支援プログラム」の改訂版が出来てきますので、プログラムを活用した経営指針の見直しといった課題について話し合われています。

三原 当社では社員と一緒に経営指針を実践する際に、なかなか支援プログラムを活用しきれないという悩みがあるのですよ。

渡邊委員長 改訂版は社員が読んでも理解出来るような記述がなされているようですよ。使いやすさに力点が置かれていると聞いています。

<道内での経営指針推進活動について>

三原 道内各支部における経営指針成文化の推進について、普及の方向性について今のお考えをお聞かせいただけますか。

渡邊委員長 まず北海道同友会は各支部が寄り合って一つの組織になっているという特殊性があります。ほかの県の同友会では一つの県に一つの委員会なので、そこでは私たちの支部での議論に近い議論が展開されているのですが、北海道同友会では支部ごとにそれぞれの事情がありますから。

三原 ああ、例えば四国に4つの県があって、それぞれの県の同友会がこちらの支部のようなイメージなのですね。で、それをまとめる四国同友会というものはありませんからね。

渡邊委員長 そこは実際に全国の会議に出てみてわかったことですね。今はオンラインの仕組みも普及してきましたし、一年くらい前までは北海道として統一した経営指針研究会をやりたいという気持ちもありました。遠隔地の方でも同じクオリティで受講できるような仕組みですね。でも、各支部がこれまでの歴史の中で積み上げてきたものがそれぞれありますし、その中で各支部が工夫して運営されている現状では、統一のフォーマットで経営指針研究会を行うのはハードルが高いと思っています。これまで通り北海道の各支部が問題を持ち寄り、自分たちの改善につなげていくという形で北海道同友会という仕組みを上手に使っていただくのが良いでしょうね。逆にそういう形で補い合えるのは北海道ならではだと思います。

三原 最後に、全道レベルで他委員会とのコラボレーションのような動きはあるのですか?

渡邊委員長 今は全道の理事会前に経営指針委員会、共育委員会、共同求人委員会、経営厚生労働委員会、障がい者問題委員会の5委員会で横のつながりをどう作っていくかを話し合っています。中でも経営指針、共育、共同求人の3委員会は同友会の活動の中核を担っていますが、私はその土台の部分に経営指針があると思っています。経営指針が成文化されている事で、共育活動も共同求人もぶれずに行えるという事です。その中で各委員会の問題意識を共有しながら、共に解決の方向を模索しつつ、活動を活性化して行ければと思います。

三原 なるほど、そういう形で経営指針成文化活動も全道で活性化していくと良いですね。今日はお忙しい中、長時間にわたってお付き合いいただきありがとうございました。
(了)

終始穏やかな語り口で、現在お持ちの問題意識などを訥々とお話になる渡邊全道委員長についつい引き込まれる1時間でした。皆様もその雰囲気は伝わりましたでしょうか?
次回は1月25日に行われた経営指針実践セミナーについてご報告いたします。
【お知らせ】
2月21日(月)には現在経営指針成文化に取り組んでいる第18期経営指針研究会研究生による経営指針総括報告会が行われます。同友会会員はどなたでも参加できますので、ぜひ第18期研究生の成果を確かめにご参加ください。
また、札幌支部経営指針委員会では第19期経営指針研究会の研究生を募集いたします。
概要は近く発表いたしますが、ご興味のある方はぜひ事務局や経営指針委員にお声がけください。

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