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札幌支部経営指針委員会 メールマガジン vol.10

2022.04.28(木)

経営指針委員会メールマガジン「月刊 経営指針」4月号
Vol.10(2022年4月28日 発行担当:経営指針委員会 副委員長 三原 広聡)

同友会札幌支部の会員の皆様
このメールマガジンは、札幌支部会員の皆様に月に一度、同友会活動の根幹となる
経営指針成文化運動に関するさまざまな情報をお送りするメールマガジンです。
今回は4月9日に開かれた第19期経営指針研究会第一講の模様をレポート致します。

<第19期経営指針研究会について>

中小企業家同友会が掲げる三つの目的(よい会社をつくろう、よい経営者になろう、よい経営環境をつくろう)の実践には、個々の企業における経営指針の成文化が欠かせません。同友会が掲げる経営指針とは何かを学び、仲間と共に自らの経営指針を作り上げる場が経営指針研究会です。

札幌支部の経営指針研究会では、研究生3名~5名に数名の専任サポーターが加わって1つのグループを構成します。「経営指針成文化と実践の手引き」をテキストに、1年間グループごとに自主的に運営していく事が特徴となっています。第19期は当初応募者数がなかなか伸びず、「今期は何グループが成立するだろう?」と委員一同恐れおののいていたのですが、募集終盤にたくさんの応募があり、ふたを開ければ総勢20名の参加で5グループによる賑やかな船出となりました。各委員の積極的なリクルート活動の賜物ですね。

とかく「難しそう」「厳しそう」といった目で見られがちな経営指針ですが、研究会はお手本になるような誰かが、正しい経営指針の作り方を教授するような場ではありません。札幌支部の経営指針研究会は、一年間自らの経営に向き合い、仲間と一緒にそれを磨き上げることに力点を置いています。まん延防止等重点措置が解除され、リアルに顔を合わせて会うことのできる喜びもあったのでしょうか、4月9日に開催した第一講の会場となった同友会ホールは、研究生たちの笑顔であふれていました。自身の経営をもっと良くしようという前向きな気持ち、初めて会う仲間やカリキュラムに対する若干の不安などが入り混じりつつ、終始和やかなムードで第19期研究会がスタートしました。

<第一講の役割とは?>

実は経営指針研究会の第一講には単なる「第一回」にとどまらない特別な役割があります。それは、これから一年間経営指針作りに取り組むにあたり最も大切な考え方、「労使見解」についてしっかりと学ぶ機会だという事です。先にも書いた通り、研究会は誰かに何かを教えてもらう場ではないのですが、この第一講に限っては経営指針委員による問題提起と、それに対するグループ討論という一種のスクール形式で行われます。もちろんテキストは「人を生かす経営 中小企業における労使関係の見解」…いわゆる「労使見解」です。最近はグリーンブックとも呼ばれていますね。

研究生たちは学びを深めていくにつれ、そして困難に遭遇するにつれ、この日、仲間と議論した内容に立ち返る必要に迫られます。経営を学ぶセミナーは数あまたありますが、同友会の経営指針との違いが、この労使見解に対する取り組みにあることは間違いありません。

<第一講の様子を実況中継!>

それでは、第一講の様子を当日の流れに沿ってご紹介いたします。

第一講は4月9日の13時より工藤英人経営指針委員長の開会あいさつを皮切りにスタート。グループごとに自己紹介、研究会のルール共有、グループリーダーの選出を終えた後、経営指針委員からの問題提起とグループ討論に入りました。問題提起は「歴史、労使見解、経営指針成文化の意義」「経営者の責任」「対等な労使関係」「国民や地域と共に歩む中小企業」の4つのテーマに分かれています。

トップバッターは小椋俊秀経営指針副委員長。「歴史、労使見解、経営指針成文化の意義」についての講義です。小椋氏が冒頭で「同友会は経営指針を学ぶ会です」と静かに語りだすと、会場に小さな緊張が走りました。これは中同協の経営厚生労働委員長である林氏の言葉とのことでしたが、北海道同友会の礎を作られた故大久保尚孝氏の「右手に経営指針、左手に就業規則」という言葉なども交えつつ、経営指針成文化運動の歴史をわかりやすく解説。長年経営指針成文化運動に携わってきた小椋氏ならではの引き出しの深さで、研究生の皆さんを経営指針の世界にいざなっていました。この後、グループごとに「労使見解」を輪読。一度読んだだけではつかみ切れない内容ではありますが、その世界観には皆さん驚かれたことと思います。

二番手は植田拓史副委員長。「労使見解」でも冒頭に語られる「経営者の責任」について問題提起していただきました。自身が研究会を修了したときは自分の作った経営理念さえ腑に落ちていなかったと語る植田氏の誠実な人柄に、研究生の皆さんもどんどん引き込まれていきます。経営指針を作った後も会社に降りかかる「人にまつわるトラブル」、それらを乗り越えて気付いた「本当の経営者の責任」とは…実体験に根差した植田氏のお話には、私も思わず胸を打たれました。
植田氏の問題提起を受けてのグループ討論では、研究生たちが経営者としての自らの経験をもとに「経営者の責任」について語り合いました。私が参加したグループでは、ワンマン社長の後を託された二代目経営者、腕一本で生きる職人を束ねる経営者などなど、それぞれ立場は異なりますが、皆さんこの激動の時代に従業員をしっかり守りたいという気概にあふれていて、元気をもらえる議論が繰り広げられていました。

三番手の小林宏幸副委員長による「対等な労使関係」についての話は圧巻でした。経営者と従業員は本当に対等なのか?対等とはどういう状態なのか?研究会を修了してもなかなか腑に落ちないといわれているこの難問に対して、素晴らしい見解を提示していただけました。小林氏による「対等とは上下のない状態、信頼を礎に互いが権利を正しく行使できる状態である」という説明には、目からうろこが落ちました。これまでの「立場は違えど人間としては対等である」という理解から一歩踏み込んだ問題提起だったと思います。
小林氏の問題提起を受けてのグループ討論では、「自分ははき違えていたかもしれない」といった反省や、「では従業員の納得とは何か」といった洞察など、深い議論が繰り広げられていました。

最後の問題提起は渡邊陽一副委員長による「国民や地域と共に歩む中小企業」です。実はこのテーマ、自社の問題として取り組むときに一番悩むといわれている部分でもあるのです。渡邊氏は我が国における中小企業の統計的な立ち位置を参照しながら、我々中小企業家が担うべき役割を示唆。この日のために用意した「中小企業のSWOT」や、地域における事例を駆使しながら、この難しい問題を考える糸口を提示してくれました。
グループ討論ではやはり、「国民や地域と言われても、ちょっとスケールが大きくて…」という研究生も多かったようです。その中でも、行事を通した地域とのかかわりや、受注で気づいた地域との関係性など、研究生それぞれの視点での気づきに新鮮さを感じました。また、この時に私が入ったグループにはベテラン経営者も多く、自社の仕事そのものが社会貢献になるという力強い発言もあり、とても有意義な議論がなされていました。

すべてのプログラムが修了したのは予定の18時半を少し回った頃。長丁場であることを感じさせない、白熱した議論に19期生の熱意を感じた一日でした。まだ第一講だというのに、各委員の鋭い問題提起に促されて研究生同士が意義のある意見交換を繰り返している様子はまさに経営指針研究会の真骨頂と言えるでしょう。

今期は、このメールマガジンで各グループの学びの現場も取材していこうと思っています。みなさんも、どのような議論が経営指針研究会で繰り広げられているのか、楽しみにお待ちください。また、経営指針テーマで取材して欲しい地区会例会などがありましたらご連絡ください。皆さんの取り組みも広報して参ります。今期も一年間、よろしくお願いいたします。

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