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札幌支部経営指針委員会 メールマガジン vol.11

2022.05.30(月)

経営指針委員会メールマガジン「月刊 経営指針」5月号
Vol.11(2022年5月30日 発行担当:経営指針委員会 副委員長 三原 広聡)

同友会札幌支部の会員の皆様
このメールマガジンは、札幌支部会員の皆様に月に一度、同友会活動の根幹となる
経営指針成文化運動に関するさまざまな情報をお送りするメールマガジンです。
経営指針委員会も新しい期に入り、フレッシュな気持ちでスタートしました。今期は
第19期経営指針研究会の活動を通して、「経営指針の作成ではどのようなことをやっているのか?」「もう少し気軽に経営指針成文化に取り組めないか?」といった会員の皆様の疑問にお応えしたプログラムをお送りいたします。

<いよいよ研究生の経営指針作りが始まりました>

前回の報告にありましたように、今期も新たな経営指針研究会がスタートしました。今期のメルマガでは研究会の5つのグループにお邪魔しながら、経営指針作りの実態について皆様にお知らせしていきます。

札幌支部の経営指針研究会では、「経営理念」「10年ビジョン」「中期経営計画」「単年度経営計画」を1年間/全19講のカリキュラムで学び、策定していきます。4月9日には、経営指針成文化のすべてに関わってくる「労使見解」の理解を中心に、基本的な運営ルール確認やリーダーの選定を行う第一講が開催されました。また、4月12日には管理会計の基本を学ぶ会計学習会が開催されています。

さて、5月からはいよいよ個々の経営指針作りに入っていきます。5月のテーマは共に学ぶチームメンバーとの相互理解を深める「自社の歴史と自分の歩み」です。直近の10年間※の売上高や利益をつまびらかにしながら、会社に起こった出来事と、その時々の対応についてまとめ、チームメンバーに発表するのです。
(※もちろん老舗企業は10年以上で作成しても良いし、設立10年に満たない場合も経営年数に合わせて作ります。)

実は、これを書いている三原も過去2回経営指針研究会に参加しましたが、その時に作成した「自社の歴史と自分の歩みシート」は今でも毎年書き足して利用しています。研究会に参加していた時には、共に学ぶメンバーに自社を理解していただくくらいの作業に思っていたのですが、最近では、自分と会社の歩みをきちんと整理し、社内で共有することは経営指針の実践のためにも大切だと思うようになりました。

今年1月25日に開催された経営指針実践セミナーにおいて、ご報告いただいた香川同友会 代表理事、香川ケアマネジメントセンター代表 林哲也氏が自社と経営者の歩みを社内外に発信することの大切さを説いておられました。香川同友会では、経営指針策定にあたって「経営者の半生を明らかにすること」を必須としているというほどの徹底ぶりです。その理由として、「経営者が社員に自分の半生と信条を赤裸々に語り掛けることによって、自身の覚悟が定まる」点を挙げられました。自分自身の生き様まで問われるのは厳しいと感じましたが、社員一同一丸となって問題解決に向かうためには一つの方法だと思います。

さて、札幌支部では「自社の歴史と自分の歩みシート」は、2016年に新調された「経営指針成文化と実践の手引き」に掲載されているシートではなく、旧版に掲載されていたシートを使っています。新版では売上高や付加価値といった経営数値を記載する欄が一つしかなく、かつ小さいのですが、旧版のシートでは「売上」「付加価値」「経常利益」「労働分配率」「総資本経常利益率」「自己資本比率」「社員数」を年次ごとに記載する仕様になっており、入力するだけでグラフ化できるので、経営の推移が視覚化できるのです。

この「自社の歴史と自分の歩みシート」には、経営数値以外にも各年次に会社で起こった出来事とその時の判断や対処法、自分の年齢と自身に起こった出来事、社会で起こった出来事を記載します。これによって、外部環境や内部環境が自分の判断にどのように影響を及ぼしたかが整理でき、その時々の判断を客観的に反省できるようになっているのです。

また、新版の「経営指針成文化と実践の手引き」には「自社の歴史と自分の歩み」検討シートが追加され、より深く創業時(継承時)の想いや、直近の数年間の自社の経営を振り返ることができるようになりました。まだ経営指針成文化に取り組んでいない皆さんも、テキスト「経営指針成文化と実践の手引き」を入手して、作成してみることをお勧めします。

<実際の研究会の模様は…>

さて、先にも述べましたように5月に行われる経営指針研究会第2講、第3講では「自社の歴史と自分の歩み」について発表し合います。多くのグループが1回3時間、研究生2名が90分の発表と討議を行うため、4名のグループは5月に2回集まって全員が発表することになります。

5月某日、あるグループにお邪魔して取材させていただきました。第一項で深い話題を話していたためか、スタート時には和気あいあいとした雰囲気でスタートしました。

一人目の発表者、Aさんのシートはぎっしりと書き込まれていて、意気込みの高さがうかがわれます。研究生一同からも「ここまで書くのか!」「自分にもできるか?」といった感嘆にも似た声が漏れ伝わります。

A社長の会社はB to Bをメインとする会社なのですが、8年ほど前から一般のお客様からの受注を取り込むB to C事業を始めました。この事業が6年前にブレイク。歴史シートの情報でもそれを境に経常利益が伸長しています。それに伴って会社の出来事の欄には新入社員●名入社と、以降毎年のように新規採用をしていることが記されています。

それだけを見ると順調満帆です。はじめは研究生メンバーの皆さんも情報量の多さについていくのが精一杯。「良い会社ですね」といった雰囲気だったのですが…
サポーターから質問が上がりました。「業績好調を理由に結構な人数を採用していても社員数はあまり変わらないですね」「経常利益はブレイクした年をピークに年々下がっていますがその理由は?」。これまで流暢だった説明が止まります。実は、受注の急増を無理な作業体制で支えてしまったために退職者も出ていたのです。また、年次ごとの利益の出方をぼんやりとしたイメージでしか把握できていなかったこともわかってきました。

これをきっかけに、チームメンバーからも質問が出始めました。「定着率はどのくらい?」「離職が多い理由は何なのだろう?」「社員とのコミュニケーションはどのような感じですか?」…メンバーからの質問やメンバー間の意見交換が進むうちに、社内でも事業に対する意見が役員毎に異なり、会社の方向性がまとまっていないことも見えてきました。A社長も「やはりできているようで、できていなかったのが分かりました。気付くことができてありがたいです」と前向きに捉えていらして、傍で見ていた私もホッとしました。

この日のテーマは会社と自分の歴史なのですが、A社長はそれを紐解くことで、会社が直面している本当の問題に気づき、向き合うことが可能になったのですね。A社長の、問題に真摯に向き合う姿勢も素晴らしいと感じました。

さて、このシートの最下段には「社会・経済の動き」を記入する欄があります。ここをしっかり書けない経営者の皆さん、実はとても多いのです。社会の動きが自社の経営に与えた影響をきちんと把握する事はとても大切です。A社長も昨年と一昨年はコロナ禍について記載していました。A社長の会社はコロナ禍でB to C部門が伸長しました。その理由もお客様への聞き取りをしていてしっかり把握されていましたが、その事はシートには記載されていませんでした。このような情報は数年後、次世代の経営者にとってとても貴重な情報になるのです。そういった話題についても話し合われました。

この日、もう一人の発表者はシートの記載が十分でなかったことと、A社長の発表が盛り上がり、時間が押したことを理由に次回に発表することになりました。研究生同士でお互いを育て合う貴重な場、それが経営指針研究会であることを実感させてくれる良い時間となりました。A社長とチームの皆さんにも感謝申し上げます。

<今期の経営指針委員会、もう一つの課題>

実際の経営指針研究会は、このように研究生となる経営者同士が、サポーターの支援を受けながら学び合う会なのですが、よく耳にするのが「敷居が高い」「怖いイメージがある」といった評判です。近年は「もう少しライトな勉強会にできないか?」「もっととっつきやすいものにならないか?」といったご希望も頂いています。

現状の研究会がこのように「情報を包み隠さず出して、本音で語り合う」スタイルのため、その簡素化は大変難しい課題ですが、今期はプロジェクトチームを策定して、その方策を考えていく事になりました。こちらの進捗もこのメルマガでご報告していこうと思います。

6月の研究会テーマはいよいよ「経営理念」の策定です。そこではどのような議論が繰り広げられるのか?次号をお楽しみに!

札幌支部 経営指針メルマガvol.11(2022年5月号)

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