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景況感大きく後退 売上高の減少が背景に(1-3月期北海道地域景況調査)

2018.05.30(水)

次期見通し改善傾向も楽観視できず

中小企業家同友会全国協議会と北海道中小企業家同友会が四半期ごとに実施している景況調査結果(2018年1―3月期)がこのほどまとまりました。全国では2392社中938社が回答。うち北海道では512社中162社から回答を得ました。この結果について、北海学園大学経済学部の大貝健二准教授(中小企業論)にコメントを頂きました。(DI値は特に断りのない限り前年同月比、▲はマイナス、①―④は四半期)


北海道中小企業家同友会18年第1期(1―3月)の業況判断DI(前年同期比)は、前回調査のマイナス1・2からマイナス13・3へと大幅な悪化を示した。2期連続の悪化である。前回のレポートにおいても、18年前半は景気後退局面が続く可能性を示したが、その通りの結果となった。

今期の業況判断DIの動向と、日銀短観や中同協DORの結果を比較してみると(図1)、日銀短観とは大きく異なるものの、日銀札幌支店取りまとめによる短観(北海道)、中同協DORとは似たような結果となっている。特に、日銀短観(全産業)においては、今期においても景況感の改善が見られているが、そうした他調査の結果と、本調査のギャップをどのように理解すればよいか、考えてみる必要があろう。

売上高、採算、採算の水準、業況水準といった他の主要な景気判断項目に目を向けると、程度の差はあるものの、いずれの指標においても悪化を示した。特に気になるのが、業界の景気水準を測る「業況水準」(図2)も、業況判断と同様に大幅な悪化を示していることである。次期は改善の見通しではあるものの、各指標がどのように推移を示すのか注意が必要である。また、採算の水準に関しても、今期において30㌽以上の悪化を示している。しかし、採算の水準は、毎年1―3月期は大きく落ち込み、4―6月期に大きく改善する動きを示してきているので、次期でどのように推移するかがポイントである。

今期の景況感が悪化した理由として考えられるのは、「売上高の減少」である。これに関しては、先ほど触れた売上高DIが10㌽以上の大幅な悪化を示していること、「1人当たり売上高」や「1人当たり付加価値」(図3)も、ともに大幅な悪化を示していることからも説明が可能である。そのほか、販売単価DIと仕入れ単価DI(図4)のギャップが徐々に拡大しており、利益を圧迫してきている側面があるのではないかと考えられる。

業種別に主要指標を見ていくと、昨期において景況感の停滞が懸念されていた建設業はやや改善を示したものの、流通商業とサービス業で大幅な悪化となった。また、製造業では3期連続の悪化を示しており、業種ごとの景況感のばらつきが顕著である。

次に、経営上の問題点についてである。「従業員の不足」(41・0%)、「人件費の増加」(34・6%)、「民間需要の停滞」(34・0%)が、回答割合の高かった上位3項目である。これらの項目に関しては、回答割合の変動はあるものの、順位は変わっていない。中小企業経営において「人・人材」に関する項目が課題として強く認識されていることがよくわかる。そのほか、「熟練技術者の確保難」「仕入れ単価の上昇」といった項目も、高まりを見せてきていることは補足しておいた方がよいだろう。

また、次期の経営上の力点に関しては、「人材確保」(47・4%)、「新規受注(顧客)の確保」(47・4%)、「付加価値の増大」(40・4%)、「社員教育」(39・7%)が上位項目に上がっている。それ以外のところでは、「人件費以外の経費節減」「財務体質の強化」といった項目の割合が高まりを見せつつある。仕入れ単価の上昇や需要の低迷が企業財務に対して影響を及ぼしつつある傾向と考えられる。景況感の次期見通しでは改善の方向性だということはすでに述べたが、決して楽観視はしない方がよいだろう。


北海学園大学経済学部 准教授 大貝 健二

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