1世紀企業 サングリン太陽園
2017.09.19(火)

病害虫の克服へ強い信念
魅力的、先進的な農業に
農業生産資材や農薬等散布用無人ヘリコプターの販売などを展開し、本道農業と共に歩んできたサングリン太陽園。その歴史は今からちょうど100年前にさかのぼります。
創業者の北濱長作氏はもともと薬局勤めで、修行後、1917(大正6)年に同社の前身となる医薬・工業薬品店を小樽市内で起こします。
道内各地を出張販売して歩く中で、冷害や病害虫に苦悩する農村の実情を知ります。そこで、病害虫を克服して農村を救うことを決意。10年の歳月をかけて防除薬剤の知識を深め、27(昭和2)年に農薬や噴霧器の取り扱いを始めました。自ら噴霧器を背負って農薬の効果を説いて回りますが、なかなか受け入れられません。それでも信念は揺るがず、2年後には農薬・防除機器販売の専門業者に転換。苦難の末、真狩村の農家が導入し、収穫量が大幅に増えたことから道が開け始めます。
戦時下の物資統制で農薬の入手が困難となり、一時は停滞を余儀なくされますが、戦後の食料増産政策などを背景に勢いを取り戻します。農業の近代化に合わせ、昭和20年代半ばから農業用フィルムを手始めに関連資材の販売に参入。長作氏の長男で、2代目を継ぐことになる正治氏が入社してからは資材供給事業に一層力を入れていきます。
また、農家の幅広いニーズに対応するため、昭和30-40年代に札幌を皮切りに全道各地に営業拠点を開設し、同社の礎を築きます。76(昭和51)年には札幌市白石区の現在地に本社を移転、91(平成3)年に現社名としました。
同社グループの大きな柱となっている、薬剤散布などに使用する産業用無人ヘリコプターの販売は89(平成1)年に開始。正治氏の長男で、3代目のバトンを受け取っている宏一氏が中心となってスタートさせました。当時の防除作業は重いホースを引っ張り、薬剤に直接さらされる可能性もある重労働。「こうしたつらい仕事から生産者を解放し、農業を魅力的な仕事にしたい」との思いに駆り立てられました。販売だけにとどまらず、操縦教習校の開設や防除作業の請負などに発展しています。
現在、北広島市内で「テクノロジーファーム」(仮称)という新たな取り組みを進めています。これは道内向け作物の品種開発や農薬効果の調査、無人ヘリなどの保管・保守点検を一手に手掛けるもの。
労働力不足、国際競争と農業を取り巻く課題が複雑化している中、宏一氏は「ここを起点に北海道農業に思いを持つ企業がネットワークをつくり、先進的な農業のかたちを提示したい」と語っています。
(中小企業家しんぶん北海道版 シリーズ「1世紀企業」より転載)
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