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札幌支部経営指針委員会 メールマガジン vol.16

2022.10.31(月)

経営指針委員会メールマガジン「月刊 経営指針」10月号
Vol.16(2022年10月31日 発行担当:経営指針委員会 副委員長 三原 広聡)

同友会札幌支部の会員の皆様
このメールマガジンは、札幌支部会員の皆様に月に一度、同友会活動の根幹となる経営指針成文化運動に関するさまざまな情報をお送りするメールマガジンです。
 今期は第19期経営指針研究会の活動を通して、「経営指針作成ではどんなことをやっているのか知りたい」「もう少し気軽に経営指針成文化に取り組めないか?」といった会員の皆様のご要望にお応えしたプログラムをお送りいたします。

<いよいよ具体的な経営計画作りが始まりました>
札幌支部第19期経営指針研究会にて9月に行われた経営方針づくり。研究生の皆さんは膨大な資料の作成に追われ、理念やビジョンとの整合性を取ることに腐心された事でしょう(メールマガジン前号をご参照ください)。続く10月は、各グループとも9月に策定した経営方針を実現するための中期経営計画の策定に入ります。経営理念のもと、10年ビジョンを実現するためにどのような具体的な動きをしていくか、どのような具体的な数値目標を設定するかが中期経営計画つくりの肝となります。
ちなみに札幌支部では中期計画の実施スパンに関しては、3~5年程度としており、その期間に関しては各社の状況や業界の動きに合わせて設定することにしています。「うちはIT・情報関連なので3年間でも長いくらいです」という経営者もいれば、「設備型の産業なので5年単位で計画したい」という経営者もいるわけです。

<「数字は苦手!」を克服しよう!>
 さて、「経営方針」の策定までと、これからの研究会で大きく異なる部分…それは具体的な経営数値のハンドリングにあります。経営者といえども、財務諸表を読むのは苦手という方は決して少なくありません。札幌支部の経営指針委員会では会計の基本知識を共有するために、この段階までに2回の会計学習会を実施しています。しかし、普段財務の管理を人任せにしていると、実際に会社の数値を使って計画を立てるのは意外と難しいものです。私、三原も始めは全くできませんでした。
この機会に財務諸表を見る習慣を身に着ければ、実はそんなに難しい事はありません。そして、その年の経営の結果は損益計算書に、経営者自身の経営に対する姿勢や目的意識は貸借対照表に如実に表れます。だからこそ財務諸表を読む目を養って、経営に生かすことが大切になるのです。

<経営者の見る数字と従業員が見る数値の違い>
経営指針研究会には現役経営者はもちろん、会社の未来を託された次期社長も参加しています。僕もそうだったのですが、従業員の時は計画を立てるときに売上を基準に考えがちです。目標も年単位の自己や部門の売上達成がメインになりますね。でも、経営者が見るべき数字は目先の売上だけではありません。会社の将来を見据えた財務数値の把握と計画立案を求められます。この違いを実感するという意味でも、中期経営計画の項は研究生の役に立っていると感じます。

中期経営計画の発表で用いられる諸表は、「中期経営計画書」、5年後までの利益の変遷を計画する「中期利益計画表」、同じくキャッシュフローの状況を計画する「キャッシュフロー計画書」の3点です。

経営計画の段階に入ると、メンバーやサポーターのアドバイスも理念的な(考え方にまつわる)ものから、数値の見方など技術的なものに変わってきます。10年ビジョンや方針との整合性について問題になるようなことは、この段階に来るとそう多くはありません。
早速、19期研究会の現場を覗いてみましょう。

<「中期経営計画」発表の現場にお伺いしました>
 今回見学したグループでは10月に2回に分けて2人ずつ発表を行うとのことで、当日は最初の2名が発表するという段取りでした。あらかじめ用意された中期計画に目を通すと、目標数値もしっかり記入されていて、具体的かつ練り込まれた行動計画が書き込まれています。

 1社目はコロナ禍で大打撃を受けた観光系企業。その次期経営者候補であるAさんの発表です。業界で指標とすべき目標をISO39001の基準で書き込んでありました。コロナ禍で大変な思いをされた経験が逆に魅力的な施策の数々を生み出していて、話を聞いているだけでこちらも勉強になります。これから業績挽回に向けてリスタートという意気込みに溢れていますが、増えてしまった借入金の返済から従業員の働き方改革まで、細かなところにまで目を配った計画書になっていました。
臥竜点睛なのが、一つ一つの施策に対しての収入効果が目論まれていないところで、今の設備で稼げる最大売上や新施策の経済効果などを研究生に問われていました。また、観光業にありがちな閑散期の人材活用についてもシビアな意見が交わされていましたが、繁忙期と閑散期が逆転する南の県の同業者とのコラボレーションなど斬新で効果が見込める施策が策定されており、メンバーから高い評価を受けていました。他の研究生からも現実的ですぐに取り組める提案が出され、まるで経営指針実践ゼミのようなやり取りが心に残りました。
Aさんは財務も担当されているため、経営数値などは完全に把握されているのが印象的でした。

 2社目は建設業を営むB社長。業績は堅調ですが、社員の働きやすさを向上することで、定着率を高め、さらに新規市場にも参入したいといった意欲的な中期計画です。事業の社会的責任に対しても意識的で、5年後の会社のありようが手に取るようにわかる計画となっています。下請けを減らし、10年かけて元受けの比率を50%まで向上したいという数値目標もわかりやすいです。ここに関してはサポーターから中期利益計画との整合性をもう少し煮詰めるようにアドバイスされていました。

 Aさん、B社長共に、中期利益計画は売上予想を核にして作成されていましたが、サポーターから「事業継続や計画達成に必要となる利益を先に設定してから、それが実現できる売り上げを算出する癖をつけましょう」とのアドバイスがありました。営業畑の経験があると、つい何となく「売り上げを年〇%上げる。利益はついてくる」といった経営計画を立てがちですが、研究生一同「経営者は計画に必要な利益をまず考えるべき」という考え方に納得していたようです。「何のために利益を上げるのか?」をしっかり考えるのは同友会の経営指針の良いところだと思います。

 このあとB社長が悩んでいるベテラン社員から若手への技術継承や、働き方のギャップに関して熱い意見交換がなされ、僕にとっても非常に勉強になりました。「褒めるの苦手、感謝を伝えるのが苦手」な昔気質の職人による「見て覚えろ」はもう時代に合いませんが、反面、「今の若い人はYouTubeなどを通して『見て覚えるのが得意』な世代でもある」とのメンバーの指摘には目からうろこが落ちました。ベテランほど従前の働き方を変えるのが苦手で、若い世代が求める働き方のとのギャップは拡がるばかり。B社長が10年ビジョンを実現する道程はここから始まるのでしょう。大変内容の濃い研究会でした。

<中期経営計画の議論を終えて>
 中期経営計画は、10年ビジョンを実現するための具体的な取り組みと、それに対する数値的な裏付けを計画に落とし込む作業です。このため、苦手意識を持つ方も少なくありませんが、一つ一つの疑問を共有して考えることで、理解が進むのが研究会の良いところ。

難解と言われるキャッシュフロー計画書に関しても、その記載内容や必要性は企業ごとに異なります。Aさんのように借り入れと返済が大きな経営課題になる場合は綿密に考えなくてはなりません。借入金の返済が毎年必要となる現金に及ぼす影響を評価する必要があります。B社長のように取引先が大手企業で入金が安定しているときはあまり気にならないというところがあります。ただ、B社長が今後元請け比率を上げていくのなら、キャッシュフローはしっかり計算する必要が出てきますね。元受けの際の支払いサイト設定も重要です。サポーターの助けを借りて、このように「自分ゴト化」をするうちに、苦手だった会計がどんどん身近なものになっていくのです。

 次回11月のテーマは単年度計画の策定。ここ数年は12月ないしは1月で全行程を終えるグループが増えました。その後は一般の会員経営者と共に受ける経営指針実践セミナーを経て、2月の統括報告会に向けた準備をしていく事になります。
ここまでくると、もうサポーターがお手伝いすることはあまりないはずですが…

次回をお楽しみに!
札幌支部経営指針メルマガvol.16(2022年10月号)

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