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札幌支部経営指針委員会 メールマガジン vol.17

2023.01.19(木)

経営指針委員会メールマガジン「月刊 経営指針」12月号
Vol.17(2022年12月31日 発行担当:経営指針委員会 副委員長 三原 広聡)

同友会札幌支部の会員の皆様
このメールマガジンは、札幌支部会員の皆様に月に一度、同友会活動の根幹となる経営指針成文化運動に関するさまざまな情報をお送りするメールマガジンです。11月号は諸事情により休刊になってしまったことをお詫びいたします。

 さて、5つのグループに分かれて活動している札幌支部第19期経営指針研究会ですが、この時期になるとグループで進み具合に差が出てきて、11月にはほぼ単年度計画まで終わってしまったグループもあれば、感染症や繁忙期などの影響でメンバーの都合が合わず、補習を繰り返して…というグループもあります。今回は、あるグループのそんな補習の様子を見学してきました。

<One for All All for Oneの精神で>
時は12月20日、他のグループの多くは単年度計画に取り掛かっている時期ですが、課題提出が遅れた仲間をメンバー全員でサポートしているグループがあると聞き、お邪魔してきました。この日は提出が遅れてしまった研究生の中期計画について話し合うために、メンバー全員とサポーターが集合していました。まさに「One for All All for One」の精神ですね!

<ひとり社長たからこそできること>
 今回の発表者は、社員を持たない所謂「ひとり社長」です。新感染症の影響を大きく受けたインバウンド事業から、食肉卸業へと事業転換をし、時代と市場の要請に合わせた新たな事業展開を模索されていました。発表をお聞きしても、素直で研究熱心、常に意識が外部に向けられているからこそ、変身することが可能だったとがわかります。
 果敢に事業転換をされた同社長ですが、わずか数年でふるさと納税への参画や、生産者とのタイアップなどでしっかりと新事業の足場を固めていらっしゃる事に驚きました。お聞きすると、行政の動きに詳しく、補助金の申請や処理は「趣味」と言い切る程得意とのこと。事業を行う上で、どこに経営リソースを求めるかは経営者それぞれですが、大きな戦略眼と情報収集の大切さを教えられた気がしました。想いを即実行に移せる機動力は、まさに「ひとり社長」ならではと思います。

<中期計画ではいよいよ「ひとり社長」からの脱却へ>
 同社長の中期計画は単に今の事業の安定を目論むものではありませんでした。10年ビジョンを拝見すると海外での事業展開まで謳われています。中期事業計画書にはそのために必要な道筋がしっかりと書き込まれていました。そして、この計画を実現するためにはいよいよ社員を雇用しなくてはなりません。向こう5年間の利益計画にもその点が反映されています。あとは注意深く必要な仕組みを一つ一つ構築していくだけ…もちろんそこが一番難しいのですが、「目標実現のために何が必要か」を具体的に洗い出すことができている時点で8割は完成しているのではないか?と思いました。

<そして、小さな会社ならではの落とし穴に気づく>
 ここまでは、緻密な中期計画にグループメンバーも感心しきりでした。しかし、同社長はこの後の質疑応答で事業計画について考え直すことになるのです。
 まず、新規に雇用するための人件費の構成についてメンバーから質問が出ました。少し安すぎるのではないかという指摘です。これは、事業内容と社員構成を具体的に想定していた同社長の説明でメンバー一同も納得できました。
 次に出た質問は収入と利益の構成について。特に営業外収入の比率が高いことについての理由を求められました。これについては事業再構築補助金があてられるという回答でしたが、事業の継続性を担保できるだけの利益創出の大切さについて議論が交わされました。補助金の切れ目が事業の切れ目となってはいけません。
 このように、相手の事業を自分事としてチームで考えていくのは、札幌支部の経営指針研究会の伝統でもあり、ひとり社長には特に心強いものだと感じました。この後、何のための経常利益なのか? 利益をどう処分するかが会社の性格を作るのでは? といった議論が熱く交わされていました。
 また、メンバーが役員報酬の低さに気づいて質問をしたところ、同社長は他にもコンサルタントとしての顔をもち、その収入も利益計画に入れていました。もちろん会社の定款にはない業務なのでしょう。今は新事業のために忙しく、コンサル業務はほとんど受けていないとのことでしたので、このセッションを通じて今後は新事業の経営に集中しようと決められたようです。つまり、個人的な収入(家計)と経営をきちんと分離するという事です(これにより中期利益計画は作成し直しです)。これまでは、「新事業からの収入が無くても何とかなる」という気持ちがあったようですが、社員も雇用することですし、メンバーからの「きちんと自分の取り分を経営に落とし込まないとダメ」という一言が同社長の背中を押しました。
 オブザーバーである筆者も、販管費における家賃などの構成が不自然な点についてお聞きしたところ、本社所在地の賃借関係が契約されておらず、口頭での約束に基づいて利用させていただいているようでした。これに関しては事業継続性を担保するためにもきちんと契約書を交わすことをお勧めしました。この辺は小さな会社ならではの落とし穴で、人間関係や善意で成立しているものに寄りかかる危険性についてグループの皆さんで話し合われていました。

 このように最後の最後まで真剣な議論が続く経営指針研究会。次回はようやく単年度計画の模様をお伝えすることができそうです。お楽しみに!

札幌支部経営指針メルマガvol.17(2022年12月号)

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