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札幌支部経営指針委員会 メールマガジン vol.2

2022.01.21(金)

北海道中小企業家同友会札幌支部
経営指針委員会メールマガジン 「月刊 経営指針」 Vol.2
発行人:経営指針委員会 副委員長 三原広聡

このメールマガジンは、札幌支部会員の皆様に月に一度、同友会活動の根幹となる経営指針成文化運動に関するさまざまな情報をお送りするメールマガジンです。

今回は同友会の「経営指針」とはどのようなものかについてお伝えします。
「経営指針」はとかく「難しい」「研究会が厳しいらしい」などと思われがちですが、
実は「経営指針成文化運動」は、同友会運動の根幹となるとても大切な取り組みです。
全ての会員が「経営指針」を持ってこそ同友会運動が成り立つといっても過言ではありません。
さて、世の中には経営スキルを向上するための勉強会や手法はたくさんありますが、同友会の「経営指針」はそれらとは何が違い、何が同じなのでしょうか?同友会ならではの「経営指針成文化」について触れてみたいと思います。

■「21世紀型中小企業づくり」と「経営指針」
現在の困難な状況下にあっても経営を前に進めていく企業像として、1993年に中同協第25回総会(北海道)で宣言されたのが「21世紀型中小企業づくり」です。21世紀型企業とは第一に、自社の存在意義を改めて問い直すとともに、社会的使命感に燃えて事業活動を行い、国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準で応えられる企業。第二に、社員の相違や自主性が十分に発揮できる社風と理念が確立され、労使が共に育ちあい、高まりあいの意欲に燃え、活力に満ちた豊かな人間集団としての企業。と謳われています。
この宣言には、中小企業家同友会の基本的理念である「労使見解」と「経営指針」のエッセンスが余すところなく注ぎ込まれています。21世紀型中小企業として激動の時代を乗り越えるためには、「労使見解」の理解と「経営指針」の成文化ならびにその実践が欠かせないのです。

■同友会の「経営指針」と他の経営手法との最大の違い…それが「労使見解」の存在
同友会の「経営指針」は、経営理念・10年ビジョン・経営方針・経営計画の4つのパートで成り立っています。この形だけを捉えれば、例えばミッション・ビジョン・経営戦略に分けたり、経営理念・経営戦略・経営計画に分けたりする他の経営手法と大きく変わるところはありません。経営方針・経営計画に関しては管理会計の知識や経営計画手法をしっかりと習得することができます。
しかし、他の経営手法との最大の違いは「経営指針」成文化のすべての過程の根底に「労使見解」を位置づけている事なのです。では、「労使見解」とは何でしょう?
同友会が目指すものの一つに「人を生かす経営」があります。なぜ「活かす」のではなく
「生かす」なのか?それは、社内の一人ひとりが生き生きと仕事ができ、自分の能力を伸ばすことで自己実現を達成する。働くことを通じて、幸せな人生を実現させていくことこそが「人を生かす経営」だからです。
労使見解には「人を生かす経営」のエッセンスが凝縮されています。「労使見解」は1975年、それまでの長い議論を受けて「中小企業における労使関係の見解」として発表されました。「労使見解」では、経営者が自らの責任…どんなに厳しい環境下においても時代の変化に対応し、経営を維持発展させる責任…を自覚することからはじまり、対等な労使関係を築くことで経営者と労働者が共に育ちあう社風をつくること、そして労働者が労働に対して自発性と創意性に満ちた取り組みができるようになることの大切さが解かれています。
よく『「労使見解」は労働問題が紛糾した時代に書かれたもので、今の時代にはふさわしくない』という話をお聞きしますが、このように、極めて現代的な課題を取り扱ったものなのです。同友会の「経営指針成文化」にあたっては、この労使見解を自分の腑に落ちるまで咀嚼し、自社の経営理念や10年ビジョンに落とし込むことからスタートします。
社員と共に考え、互いに自発的に会社の発展のために尽くしあう仕組みが内在していること、それが他の経営手法との最大の違いであると言えます。

■「経営指針」と「働く環境づくり」
「働き方改革」「新しい働き方」という言葉がメジャーになって久しいですが、「経営指針」に従来からあった「働く環境」に関連する部分を抜き出し、拡充して独立させたのが2019年発行の「働く環境づくりガイドブック」です。今、最もクローズアップされている経営課題に関しても、「経営指針」の成文化と実践にはすでに内包されているのです。
「経営指針」成文化が同友会会員の皆様にとって身近で切実な課題だという事がお判りいただけましたでしょうか?
札幌支部では1年間で経営指針の成文化を学ぶ経営指針研究会を開催しています。新たに会員になった皆様、これからやり直してみたいという皆様、ぜひ私達経営指針委員と共に学び合いを始めてみませんか?

※参考資料
同友会は言葉の定義に厳しいので、何かを発表するときにはいろいろと調べるのですが、今回参考にさせていただいた文献を下に示します。ほとんどが事務局で入手できますので、読んでいないものがあったら事務局に問い合わせて下さい。

書籍紹介

・「人を生かす経営 中小企業における労使関係の見解」 (中同協・550円)
いわゆる「労使見解」といわれる小冊子で、経営指針を学ぶ上での1丁目1番地となるテキストです。労使見解のほかにも対談や策定の過程などが掲載されていて、とても心にしみる一冊。植物の芽の写真を使ったグリーンの表紙から「グリーンブック」と呼ばれているという事をつい最近知りました(笑) すべての同友会会員に御一読をおすすめします。

・「同友会運動の発展のために」 (中道協・660円)
同友会の成り立ちや歴史、そして運営手法についてわかりやすく解説されています。役員の運営マニュアルという側面もあるので幹事の皆さんにとってはおなじみですね。

・「21世紀型企業づくりをめざして 中小企業の経営課題」 大久保尚孝 著 (北海道同友会・550円)
北海道中小企業家同友会設立に関わり、初代事務局長として、そして会員の精神的支柱としてご活躍された大久保尚孝氏による小冊子です。とても分かりやすい言葉で同友会運動のあるべき姿について語ってくださっています。
大久保氏の著作では「激動をよき友に」もすばらしいのですが、非売品なのがネック。
事務局でアーカイブ化していただきたいところです。

・「経営指針成文化と実践の手引き」 (中同協・2,200円)
経営指針研究会の公式テキスト。「この一冊で、たとえ会員でなくても同友会式の経営指針作成ができるものを」という目標をもって作られた最新版の経営指針教科書です。北海道の同友会会員も作成に参加しています。参考事例もふんだんに掲載されていて、読み物としても楽しめますよ。

・「同友会がよくわかる」 (中同協・330円)
同友会の歴史や理念が、そのバックボーンと共にわかりやすく解説されています。
この本を読んでわかった経緯なども多く、実は隠れた名著かもしれませんね。

次回は、全道経営厚生労働委員会の石見秀樹委員長のインタビューをご報告いたします。

 

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