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札幌支部経営指針委員会 メールマガジン vol.13

2022.08.30(火)

経営指針委員会メールマガジン「月刊 経営指針」7月号
Vol.13(2022年7月31日 発行担当:経営指針委員会 副委員長 三原 広聡)

同友会札幌支部の会員の皆様
このメールマガジンは、札幌支部会員の皆様に月に一度、同友会活動の根幹となる経営指針成文化運動に関するさまざまな情報をお送りするメールマガジンです。
今期は第19期経営指針研究会の活動を通して、「経営指針作成ではどんなことをやっているのか知りたい」「もう少し気軽に経営指針成文化に取り組めないか?」といった会員の皆様のご要望にお応えしたプログラムをお送りいたします。

 

<みなさんは「夢」を持って経営に取り組んでいますか?>

2016年12月、中同協の「経営指針成文化と実践の手引き」が改訂され、経営指針のあらましが変わりました。最も大きな変化は「10年ビジョン」が付け加えられたことでした。札幌支部では2017年4月からスタートした第14期研究会より新テキストを導入、経営指針研究会のプログラムを大幅に改定しました。

さて、この「10年ビジョン」、実際に取り組んでみると途方もなく難しく感じられるのです。そもそも、会社全体で(社員と)共有できる夢やビジョンを示せというのです。早速、筆者(三原)も取り組みましたが、そもそも自分の夢も頭に浮かばない僕にとって、これは超難題でした。社員に助けてもらっていなかったら未だに完成していないかもしれません。

「10年ビジョン」は社員と一緒に取り組む課題です。経営者だけにしか理解されない「夢」では誰もついてきませんからね。導入期には経営指針委員の間でも「10年ビジョン」についていろいろな解釈があり、「実現できそうなことを書いてもだめだ。もっとワクワクするものを!」とか「ビジョンなんだから絵にできるような、みんなの心に浮かぶようなものでないと!」とか、いろいろと物議を醸していたものです。

皆さんにとって10年というのはどのくらいの期間ですか?長いですか?短いですか?「10年ビジョン」は何も正確に10年後の事でなくても良いのですが、「ある程度の期間がないと到達できない目標を社員とともに設定する」ことがポイントだと思います。
当然、実現を社員みんなが望むものでないと続きませんから、「ワクワク感が大切」ということになるのですね。まず経営理念をしっかり確立して、10年後の社員の年齢構成や、10年後に主軸となっている自社商品やサービスを考察、目指す会社の規模や財務状況、会社の雰囲気や働き方などなどを総合的に考える事が10年ビジョンつくりの骨子となっていきます。

そう考えると、やっぱり「10年ビジョン」つくりは楽しい作業であるはずなんです。だって、夢を語り合うんですから!それでは、実際に「10年ビジョン」について研究生たちが討論している現場を覗いてみましょう。

 

<みんな、夢を語れているのかな?「10年ビジョン」誕生の現場から>

札幌支部では「10年ビジョン」は7月の第7講でメンバー全員(3~5人)が発表するスタイルを取っています。指針成文化プログラムを策定しているときは、「10年ビジョン」は一種の夢語りなので、あまりメンバー間の突っ込み合いも無いとの認識だったかもしれません。ところが…

今回は研究生4名で構成されたグループに取材させていただきました。1人の持ち時間は発表、質疑、討論を含めて45分くらいです。さあ、すんなり進行するでしょうか?

一人目の発表者、Aさんは10年後もバリバリ現役という若さで、自称ワンマン社長。機械を扱うかなり特殊な会社を経営されています。10年ビジョン検討シートには「社員想いの経営者」「平等な評価」「働きやすい環境」と、ワクワクするキーワードが並びます。
「おお、いいねー」と思いながら読み進むと…
なぜか「10年ビジョン」には「健全経営」とか「信頼される企業」とか、どこの会社にも当てはまる、そして10年も掛けずに実行できそうな言葉が並んでいました。
サポーターやメンバーからも「ビジョンを見て何の会社かわかるといいですね。」「どういう将来像ならビジョンと言えると思いますか?」といった感想が飛び交い、ご本人も「ありきたりでオリジナリティがなかった。もっと自分の仕事と結び付けて作り直したい」と反省の弁を述べていらっしゃいました。

二人目は建設会社の経営者。年齢構成推移表や外部環境分析、検討シートと資料もしっかり書き込まれており、社長の几帳面でまじめな性格が見て取れます。検討シートのキーワードは「利他の心」「地元も社員も大切に」などなど。初めは素敵なビジョンが待っていそうな雰囲気だったのです。
ところが、結果的として書き込まれた「10年ビジョン」には現状分析や、経営・営業の手法が並び、なんとなくワクワクしないものになってしまっていました。ビジョンというより起こり得るリスクに対する対策?ご本人に聞くと、若い社員には意見を聞かずに作成したとのこと。メンバーからも「とても素晴らしい経営理念を作られていたのに、どうしてこうなったの」との声が漏れます。どうも、しっかり現状を分析しすぎて硬くなってしまったようです。
サポーターは「きっともうビジョンは浮かんでいるんだけど、それを言葉にできていないのですね」と話していました。やっぱり「10年ビジョン」は難しいなぁ。

三人目は飲食業。この数年、とても大変な思いをされてきた業種です。自然と話を聞く方にも力が入ってしまいます。検討シートを読むと、日々お客様と接している業種のためか、目線もお客様目線になっていることがしっかり伝わってきます。「地域になくてはならない会社」「食の好きな社員が集う」「従業員も満足できる」…うわぁいいなぁと読み進めたのですが…
なぜか「10年ビジョン」には「適正な利潤」とか「DX投資」とか、堅苦しい言葉が並んでいます。メンバーから「なぜDXを掲げたのですか?」と聞かれると、「今DXを扱える人が社内に少ない。調理しか能がない人が多くて、文章力もない。でもお客さんはみんなi-padや動画を見ますから、やっていかないとだめ」との返答。僕も「ドッグイヤーの分野なんだから、そこは10年も掛けずに…」とつい思ってしまいました。実際にSNSでリピート客を確保しているとのことなのですが、それは今現在のことですよね。
ただし、「業界的にはブラック」と言い切るその言葉の裏には「きちんとした会社にしたい」との強い気持ちがある事が伝わってきます。もう少しで形になりそうです。

四人目は個人で経営している整体施術院の若手経営者。検討シートを読むと、まさにサービス業の夢が書き込まれています。「次々と紹介が生まれる」「全国から依頼が舞い込む」「社員が稼げる会社」「小中学校に呼ばれて講師をやっている」…なんかすごくワクワクしてきました。今は一人だけど、10年後は社員と一緒に頑張っているビジョンであることも頼もしい限りです。メンバーからは「経営理念にあった美点をもっともっとビジョンにも取り込んでは?」との意見も出ました。やっぱりワクワクする話が出てくると、メンバーの議論も弾むのですね。

サポーターからは、このチームのメンバー全員に通底する「正直さ」「利他心」「挑戦心」への言及もなされ、とても楽しい心持ちで3時間の研究会を締めくくることができました。
「10年ビジョン」、この通り研究生のみなさんも苦戦していますが、自分を信じて少しだけ見方を変えれば、こんなに楽しいものになるのです。きっとこのグループの皆さんの「10年ビジョン」も修了時にはキラキラ輝いているんだろうなと確信しました。

次回はいよいよ、研究生全員が一堂に会して「経営理念」と「10年ビジョン」を発表し合い、意見を交わし合う「中間報告会」です。今回の「10年ビジョン」や悩み抜いた「経営理念」がどう生まれ変わっているか、ちむどんどんしてきました。お楽しみに!

 

<今期の経営指針委員会、もう一つの課題>

実際の経営指針研究会は、このように研究生となる経営者同士が、サポーターの支援を受けながら学び合う会なのですが、よく耳にするのが「敷居が高い」「怖いイメージがある」といった評判です。近年は「もう少しライトな勉強会にできないか?」「もっととっつきやすいものにならないか?」といったご希望も頂いています。

現状の研究会がこのように「情報を包み隠さず出して、本音で語り合う」スタイルのため、その簡素化は大変難しい課題ですが、今期はプロジェクトチームを発足して、その方策を考えていく事になりました。プロジェクト担当の植田副委員長よりロードマップが提示された段階ですが、こちらの進捗もこのメルマガでご報告していこうと思います。

 

札幌支部経営指針メルマガvol.13(2022年7月号)

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