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「共同求人」って?(1)自社の姿を映す鏡

2019.03.30(土)

同友会が大切にしている運動の柱の一つに共同求人という活動があります。

共同求人では依然として続く採用難の中で、合同企業説明会や学校教職員との懇談会、求人に関する勉強会など、求人活動に関する様々な活動を行っています。

一見、単なる採用活動の場とも思えますが、実は共同求人は自社の変革活動とも言えるんです。このコラムではそんな共同求人の魅力を会員経営者の皆様にインタビューしてみました。


札幌支部で共同求人委員長を仰せつかっているレイジックスの敬禮と申します。よろしくお願いいたします。

よろしくお願いします。早速ですが、共同求人の現在の活動を教えてください。

現在は年3回の合同企業説明会と、札幌近郊大学での学内合同企業説明会を開催しています。さらに学校の教職員のみなさんと意見交換をする懇談会や、学校訪問、大学での講演活動も行っています。経営者の学びの場として、選ばれる企業づくりを目指した採用勉強会や、新卒採用を通した企業変革に重きを置いた企業変革学習会、採用した学生のみなさんと共に学ぶ内定者フォローアップ研修会、合同入社式などなど、採用に関する部分だけでなく、地域の様々な機関と連携した活動を展開しています。

 

……はい。とにかく幅広い活動であることはわかりました。ええーつまり共同求人って結局何なんでしょうか?

多角的な視点で考えられるので、「これだ!」というものはありませんが、僕が一番大切に感じているのは経営者自身と自社の変革ですかね。色々と新卒採用に関する活動をしているんですが、共同求人の主軸は若い人を採用することではないんです。

新卒採用に関する共同求人の活動が、経営者自身と自社の変革になる、と?

その通りです。僕にとっての共同求人活動って、自社が鏡に映って見えるものなんです。鏡に映った自分自身を見て、「何でダメなんだろう」と問いかけ続ける。できるところから一個ずつ変革しながら、自分のマインドも変化していって、自社がいい方向に変革していく。それが共同求人の魅力なんだと思います。

 

なるほど~。具体的にどんな活動で自社の変革を実感しましたか?

最近だと、合同企業説明会に自社の社員を連れて行ったときに感じましたね。社員に参加してもらうためにまず、社員の皆が自社を「良い会社だな、生きがいのある会社だな」と思ってもらわなきゃいけない。そのためにはやっぱり、会社を良くしていかなきゃダメですよね。だから共同求人=経営者自身と自社の変革なんです。

ふむふむ。共同求人は深いなあ。

当社はやっと今年合説に若手社員を2人連れていけて。その社員と一緒に自社の事を話し合ったり、2人で考えてもらったりしました。それがあってから2人がますます成長してくれていることを感じて、少しずつ、良い会社になっているのかなとうれしくなりました。

 

 

それは確かにうれしい変化ですね。社員のみなさんも、前向きに取り組んでいる様子が感じられます。やはり社員のみなさんも、共同求人や同友会の活動を通した敬禮さんのマインドの変化に共鳴して、変わってくれたんでしょうか。

そうだと嬉しいです。社員も急激に変わったわけじゃなくて、少しずつ変わったのかなと思います。例えば、同友会の先輩経営者が「社員とはきちんと面談した方がいい」と話しているのを聞いて自社で実践してみたら、とある社員に「俺、どうやって仕事辞めようかって考えてるんすよ」と言われてしまったんです。

 

 

おお……、それはまたショックな一言でしたね。

当時は「辞められてしまうかな」と思いながらも彼に真剣に向き合っていたんですが、それから8年たった今では社員表彰のMVPを取るくらいの社員になってくれました。表彰は僕からの指名じゃなくて社員全員の投票で決まるから、誰から見ても頼れる社員になってくれたんだと改めて成長を実感します。彼は「うちの会社にいることで、自分はまだまだ成長できる。もうちょっと居させてください」と言ってくれて。「もうちょっとって言うな(笑)」と言い合えるくらいの関係性になりました。

それはすごい。彼の中で一体何が変わったんでしょう。

本人に理由を聞いたら、「社長が自分を信じてくれるようになったからです」と言われました。やめてしまうかもと思っている経営者は社員も信頼できないし、社員が変わろうとすることもできないんですよね。だからやっぱり経営者である僕から変わらなくちゃいけなくて。自分が悪かったんだと気づいてから、ますます社員皆を大切にしなきゃいけないんだと思うようになりました。

確かに大切なことですね。ところで、敬禮さんの「社員を大切にしよう」というマインドの変化はいつ頃芽生え始めたんでしょうか?

実は自社の経営状態が悪化して債務超過になってしまったことがあったんです。その時から、少しずつ同友会の考え方に触れて変わって行ったんだと思います。それまでは同友会の活動にも全く出ていない幽霊会員だったんですが、「このままじゃだめだ。何とかしなきゃ」と思っていた時に、不意に目に留まったのが同友会大学の案内でした。

同友会大学!?(注;同友会大学とは、同友会が主催する大学のこと。)

僕はそれまで同友会には全く興味もなかったし、人を生かす経営なんて全く考えていない経営者でした。それが同友会大学に行くようになってから、少しずつ同友会の学びに触れるようになって。はじめは同友会の考え方が全然わからなかったけど、色々な同友会会員の経営者と出会って、漠然と「こういう人になりたいな」と思える人が出てきたんです。それは当時の共育委員会の相談役や共同求人委員長をやっているかっこいいオヤジで。

かっこいいオヤジですか。どんなところがかっこいいと感じたんでしょうか?

やっぱり人間としての懐の深さ。どうやったらこんな人になれるんだろうとずっと思っていました。社長が社員一人ひとりを尊敬することですね。そこに行きつくまでにはものすごく時間がかかると感じています。

なるほど。共同求人委員会へは、当時の共同求人委員長に惹かれて参加したのでしょうか?

それはまた違う経緯でした。僕は同友会に入る前から新卒採用はやっていたんです。社員の育成に悩んでコンサル会社を頼りながら新卒採用に着手したもののうまく行かず、結局さらに会社を傾けただけでした。そんな折に同友会の共同求人の案内が来て、「この値段で合説に出られる!?」と知って共同求人活動に参加しました。

そうだったんですか。そこからどんな経緯で委員になったんですか?

実は共同求人に参加してはじめての合説に出たときに、自分の想像と全然違う雰囲気だったことに対してバンバン文句を言って帰ってきたら、次の日に事務局が飛んできて一言「敬禮さん、文句言うなら委員会に入ってください」と言われて委員会に参加したんです。

 

文句言うなら委員会に入ってください!?

はい(笑)その後、委員会でも初参加の時に文句を言いまくっていたら、当時の共同求人委員長に「同友会をよくわかってからものを言え」と言われ、面食らった記憶があります。

よくわかってからものを言え! 厳しい一言ですね……。

いやいや、今になって思えば当時の僕はエゴしかなかったんです。『やり方のブラッシュアップ』しか考えていなくて『新卒採用に取り組む』となったら、『じゃあ新卒採用をどうやって効率的にやろうか』とか。そこにはやっぱり「想い」がなかったんだと思います。会社をデカくしたいとか、金が欲しいとか。そういうエゴを感じ取ってあの言葉を言ってくれたのだと思います。

それでかっこいいオヤジなんですね。はじめはわからなかった共同求人の考え方に共感するようになったのはいつごろからなのでしょうか?

委員長になる少し前頃だったと思います。色々な経営者と悩みを打ち明け合う中で共同求人の考え方が腹に落ちてきたんです。それを自社で一つずつ実践してステップアップしていく中で、少しずつ自信がついてくる。ただの勉強では全然ダメですよね。どこまで自社の中で実践しているかなんだと思います。それを実直にやることで、自然と腹に落ちてきたんです。

 

人を生かす経営を読み返したときに、自分の実践にまさにマッチしていて、やっぱり同友会は良い会だなって素直に思いました。そうした活動の中で、少しずつ共同求人の始まった経緯や想い、それからその想いがどう現在に繋がっているのかを知って、やっぱりやり方より在り方なんだなと思うようになりました。

『やり方のブラッシュアップ』ではなくて、『あり方』を考えていこうということですね。私も敬禮さんからいろいろな話を聞いて、共同求人に興味が出てきました!共同求人の歴史や想い、ぜひ私にも教えてください!

・・・・・・つづく

 

株式会社レイジックス
代表取締役 敬禮 匡
創 業:1996年
資本金:2,200万円
事業内容:個人旅行者向けの観光飲食店運営、訪日外国人対応コンサルティング
従業員数:60名(2018年12月現在)
所在地:北海道札幌市中央区南2条東1丁目11-1 泊第3ビル2F

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