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「共同求人」って?(2)始まりの熱き想い

2019.04.26(金)

今回の共同求人コラムは長きに渡り同友会運動と共に歩んできた北海道中小企業家同友会の専務理事である細川氏にご協力いただきました。

前回敬禮さんが仰っていた「共同求人の始まった経緯や想い」とはどんなものだったのでしょう。


北海道同友会で専務理事を務めております、細川です。

細川さん、よろしくお願いいたします。

よろしくお願いします。

早速ですが、前回敬禮委員長に共同求人の事を聞いて、歴史や想いについてぜひお話を聞きたいと思っていました!そのへんのところを詳しく知りたいです!共同求人って、現在は様々な活動をしているようですが、どうしてはじまったんですか?

共同求人の活動が本格的に始動したのは、1972年の事です。当時はまだ合同企業説明会すらない時代の中、集団就職で中卒・高卒の生徒がどんどん本州に行っており、同友会会員の経営者にとっても若者が来てくれない。定着してくれない。育たない。という悩みは深刻なものでした。

 

 

大企業の青田買いですね。

そうですね。私の同級生でも、中学を卒業して富山の紡績工場に行った人がいたくらいで、当時は新卒者を地域の企業が採用するのは本当に大変だった。それでも同友会の経営者たちは立ち上がって「本を正せば、集団就職していく学生も私たちの企業で働いている従業員のもとで育った子供たちだ。育った地域で若者が働く場を求められるようにしたい」と力強い思いを確かめ合って運動が始まったんです。

 

 

共同求人とはまさに、経営者の強い想いが詰まった運動なんですね。

悔しい想いもたくさんあったと思います。当時、中小企業へのイメージはあんまり良くなかったから、学校へ求人票を持って行っても「中小企業はどうせ倒産するんだから、大事な卒業生を預けるわけにはいかない」と断られてしまうこともしばしばあって。それでも急かず、焦らず、諦めずに続けてきた結果が今に続いているのだと思います。

諦めてしまうのではなくて、訴えかけ続けてきたということですね

それも必要だし、先生方の言うように、私たち自身ももっと良い会社を目指していかなければならないと再確認できたから、より良い関係を作ることができたのではないかと思います。

なるほど。第1回のコラムで敬禮さんも言っていましたが、やっぱり共同求人は経営者自身と自社の変革活動なんですね。

その通り。地域や学校の先生に認めてもらうためには、やっぱり企業の経営体質を自力で強化して、社会的な信用を高めていく必要があるだろうし、労使が共に学び合う「共育」活動を推進して社員に誇りを持って働いてもらえる環境を作らなければならない。その成果を提示できてはじめて中小企業の持つ可能性を学校や父母に訴えかけて行けるんだ、と。まさに同友会運動の総合実践ですね。

 

 

同友会運動の総合実践!なるほど。結局新卒を採用したいという思いも、同友会の全ての運動に繋がっているのですね。とはいえ、それだけ厳しい情勢の中、当時はどんなふうに活動を展開していたんでしょうか。

初めは共同で新聞広告を出したり、ガイドブックを発行したりしていました。ガイドブックのキャッチフレーズは「若い力で北海道の繁栄を」。まさに当時の経営者の想いがこもったメッセージだと思います。このガイドブックを各学校に訪問して置いてくるという活動をしていました。また、先生とも積極的に懇談会を行い、経営者が講師として学校の授業に協力することもありました。

 

 

その後、1975年に合同企業説明会がスタート。実はこの合同企業説明会というスタイルは、北海道同友会が始めたものなんですよ。

ええーっ!北海道同友会が合説のスタートなんですか!?

 

 

そうなんです。合説も、やっぱり1社ではなかなか学生が来てくれないから、皆でやろうと考えたのがはじまりでした。共同求人活動に関する私たちの基本的な考え方の1つに「たとえ自社で採用できなかった場合でも、応募者の人格を尊重し、その人の希望と適正に見合った職を、誠意を持って探してあげるように、細心の注意と最大の努力を払う」という考えがあります。だからこそ、同友会の合説は、皆で作り上げてきたものなんです。

なるほど。単なる人採りじゃなく、社会の受け皿としての姿勢を持っているんですね。

そう。だから、私たちの共同求人活動は単なる人集めではなく、社会的教育活動として高く評価され、期待がかけられているんです。学校からも「同友会の人間中心の経営理念、人育ての考え方には教育者として共鳴できる点が多く、こういう企業にこそ積極的に生徒を回したい」という声がかかるようになりました。

先人の経営者たちの熱い思いが、地域のみなさんにも伝わり始めたわけですね。細川さんが実際に携わった中で、思い出深いエピソードなどありましたか?

私の場合はとかち支部にいたころに地域の経営者から感じられた「たとえ社員が自社を辞めても十勝の会社に就職するのだから、退職=残念ではなくて、十勝で働く子を育てている」という思いが印象深かった。地域を担う人を育てるという意識を持っている経営者が多く、改めて共同求人の理念を感じさせられました。単なる採用活動ではなく長いスケールや広い意味での共同求人活動に取り組むことが重要なんだと考えさせられました。

やっぱり単なる採用活動じゃないんですね。細川さんは共同求人に参加する企業経営者をたくさん見てきたのだと思うのですが、共同求人に取り組んでいる印象的な企業はありましたか?

もちろんたくさんありました。どの会社も共同求人活動で新卒を採用して終わりではなく、その社員が研修会や同友会大学に参加して幹部になっていく中で、会社が変わっていったと経営者自身が実感しているんです。採用と共育がバラバラになっていない。そういう会社は共同求人で採用して、5、6年経ったら同友会大学に来て学び合って、部長になり、経営陣になっていくという一連のストーリーが続いていく印象があります。

 

 

同友会運動の総合実践ですね。

共同求人は初めの一歩を守り、育てていく責任のある活動。共同求人を通して社員全員と上下の関係ではなく、パートナーの関係で同じ人間としていろんな経験や知識を持ち寄って組織を生かしていき、夢を実現して行ける強い組織になればいいと思っています。

若い人は色々な可能性を持っているし、そういう人が入ってくることによって会社の雰囲気は変わっていく。新しい可能性を切り開いていけるような共同求人活動がこれからも続いていくのだと期待しています。

細川さんありがとうございます!共同求人に関する歴史的な背景や想いが良くわかってきました!地域や先生との協力も大切なポイントなんですね。・・・これはますます興味深い。具体的に現在はどんな活動をしているんでしょうか!?私にも教えてください!!

 

・・・・・・つづく

 

一般社団法人北海道中小企業家同友会

専務理事 細川 修

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