「共同求人」って?(3)学びと実践のサイクル
2019.06.22(土)

今回の共同求人コラムは、現在の共同求人の活動について札幌支部共同求人副委員長の上原氏にインタビューしました。
前回細川さんにお話しいただいた歴史的な運動の流れから、一体どんな活動が続いているのでしょうか?
上原さん、よろしくお願いいたします。
はい。よろしくお願いします。
まず、上原さんはどうして同友会に入会されたんですか?
入会のきっかけは私の父(先代)ですね。もともとは父が会員として熱心に活動していたようで、私が前職を退職して恒栄工業に入社してから、すぐに勧められて参加しました。
なるほど!共同求人の活動へは、いつごろから参加されているんでしょうか?
私が共同求人の活動をはじめたのは2015年の夏頃でした。以前から当社は新卒採用を行っていたんですが、年々厳しくなる採用情勢の中で、「何とか1名採用できた」というマズい状況が続いていて、とうとうこの年の春新卒者が採用できなかったんです。
それで共同求人に参加されたんですね
はい。ずっと「マズいな、何とかした方がいいな」と感じていたのに何もしていなかった自分を悔いていたときに、たまたま学校教職員と企業との懇談会の案内を目にして参加しました。
学校教職員と企業との懇談会ですか?
そうです。当時は共同求人という組織があることすら知らないままに参加したんですが、そこでの学びがかなり衝撃的で・・・。
衝撃的ですか。一体どんなことが衝撃的だったんですか?
今の学生が考えていることとか、先生や学校がどんな思いを持って就職支援に取り組んでいるのかとか。とにかく採用側からの視点では全く分からないようなことを目の当たりにして、気づいたことはとにかくメモに取りました。色々な大学の各学部・学科の先生と会話するのも初めてで、普段から密に学生と接触していらっしゃる方々から教えていただいた実態は本当に衝撃的でした。
今年で第6回目となりますが、学校教職員と企業との懇談会は全く採用活動の経験がない方には特におすすめですね。私はこの場で色々な気づきや教えをもらって、会社を変えるきっかけをいただいたと感じています。
参加された先生方の考えや想いに触れて、「なるほど、これから会社を変えていかなければいけない。会社をこういう風に変えていきたい」と思ったときに、その思いを実直に先生に打ち明けてみると、先生が共鳴してくれてそこから学校での講師依頼をいただいたりもしています。
敬禮さんも言っていましたが、やっぱり共同求人は自社の姿を鏡に映して、「こんなんじゃだめだ。自社を変えていかなくちゃ」と思える活動なんですよね。先生からの依頼を受けて講師をさせていただくだけでも、学生のナマの反応をもらって自身の学びに繋がるんです。
懇談会に出るだけでもものすごい学びのサイクルにつながるんですね。新卒採用って、本当にただの人採りじゃなくて、会社を変える活動なんだなあ。
そうなんですよ!実際に当社も私が共同求人活動を始める5年前までは、インターンシップの受け入れなんてとてもできないような社内環境でしたが、労務環境や制度、採用への社内全体の考え方の共有など、社員と何度も話し合っていく中で少しずつ変革して、できるようになりました。
それはすごいですね!上原さんは、そういう社内の変革はどのように進めていったんでしょうか?
はい。共同求人の仲間たちは「いい会社になろう」というブレない目的を持って集まっているから、新卒採用に関する取り組みはもちろん、社員教育や社内環境の整備などで既に私の一歩先、二歩先前に悩んで、会社の変革をやっている経営者がたくさんいます。そういう仲間の経営者の話をじっくり聞いたり、ときには会社に直接訪問したりして自社に落とし込んでいます。
まさに切磋琢磨する関係なんですね・・・!皆さんそれだけ新卒採用に力を入れているということなのだと思うのですが、なぜ、新卒採用が必要なんでしょうか?
そうですね。人は歳を取っても会社は存続していかなければならないからでしょうか。私は社長の責務とは「会社を継続・成長させていくこと」だと認識しています。そのためには自社の明日を担う社員を採用して、その社員の皆が幸せを感じられる会社であることが必須条件だと思っているんです。労働環境が劣悪で社員に顔向けできないような状態の経営をすることはしたくないし、社員の幸せを考えるのは当たり前だと思っています。会社の継続と成長を考えたとき、単なる人員補充だけが目的の場当たり的な採用はなじまないですよね。
この会社のイズムを持った人たちが、この会社という箱を上手に活用して成長していく。会社がそれで発展しながら存続していく。新卒採用はそのための重要な役割の一つを担っているのだと思っています。
事業継続のためには、まず会社が社員にとって幸福追求できる場であることが大切だということですね。そういう場を作るために、社長がいる、と。そして、そういう場を作るためにどうするべきか、どの方向に向かうべきかを共同求人の活動で学ぶことができるということですね?
そう。当社も最近、評価制度を導入したのですが、以前から共同求人の学び合いの中で「良い会社」を目指すためには社員をしっかりと評価してあげなくちゃいけないという思いをずっと抱えていて、段階を踏んでやっと実行に至ったんです。この制度は今年の2月に行われた企業変革学習会の報告からもヒントをもらいました。
企業変革学習会ですか?
道外の同友会会員の経営者から共同求人を学ぶ学習会なのですが、ずっと評価制度をどうするべきか悩んでいる中で、2月の学習会で講演をされていた方の話を聞いて「成長支援制度っていいな」と感じて、色々と自社を見つめなおしながら考課連動型の成長支援制度を導入しました。
考課連動型の成長支援制度?
通称育ち合い制度です。当然評価制度の要素もあるので成長指標に沿った評価をするのですが、このときに自分の目標を、誰かの成長目標の支援にすることもできるようにしたんです。
ほう。例えば、後輩が何かをできるようになるために自分が取り組むことを目標にできるということですね?
そうです。当社は社員同士の仲が良くて、社内の雰囲気も良いなと感じていて。だからこそ個人主義的な評価制度ではなくて、皆で助け合って育っていく要素が強い方がいいなと思っていたんです。私はそれが中小企業の良いところだと思っていますし、共に働く社員の成長を喜び合える雰囲気はすごく大切だと思っています。
だからこそ、育ち合い制度なんですね。良い会社を目指した様々な変革を社員のみなさんはどう感じているんでしょう?
実は、この制度を取り入れる際に社内で無記名のアンケートを取ってみたんです。そのアンケートの中に思い切って「会社の方針についてどう思いますか」との項目を作ってみて(笑)
おお!!直球勝負ですね!結果はどうだったんですか?
私もかなり不安だったんですが、ドキドキしながら見てみたら5段階評価で最も評価の高い「大変共感できる」が過半数を超えていて、次に評価の高い「まあ共感できる」と合わせると、ほとんどの社員がどちらかにチェックをつけてくれていました。設問を作りながら、自分では「まあ共感できる」と「普通」を合わせて過半数くらいかな、と思っていたのですごくうれしかったですね。
社員のみなさんも上原さんの考えに共感しているんですね。
そうだと本当に嬉しいです。こういう社内環境の変革も、共同求人で新卒採用に関する勉強をして「会社を変えたい」と思えたのがきっかけです。変わりたいと思ったらじっくり時間をかけて学んで、実践する。学んで「良いな」と思ったものを自社に落とし込んでいくことが重要なんだと感じています。
確かに!敬禮さんも「ただの勉強ではダメですよね。どこまで自社の中で実践しているかなんだと思います。それを実直にやることで、自然と腹に落ちてきたんです。」と仰っていました!やっぱり学んで「勉強になった~~」じゃなくて、自社に落とし込んで実践することが大切なんですね。
そうです。学びの瞬間はいたるところにあるので、共同求人に参加したことのない人にはぜひ共同求人の活動は選ばずに出てほしいです。経営者は多忙だし、これは今は良いかなと思って取捨選択してしまったりしますが、本当に「自社を変えたい。新卒採用を始めたいけれどわからない」という状況であれば、すべてに参加してみてほしいです。
出続ける覚悟ですね。
スピードラーニングじゃないですけど、ただ聞いているだけでもものすごく勉強になるんです。そこで話し合われていることにどんな意味があるのか、自社にどうつながるのかがわからなくても出続けることです。
はじめは合説に出ても学生は一人も来ないかもしれません。何回かやってみてもうまく行かなくて足が遠のくこともあると思います。ですが私は、共同求人は今の結果を見て一喜一憂するような短期的な活動ではなく、自分自身のマインドや会社の土台を見つめ直し、成長していくための長期的な活動だと思って参加してほしいと思っています。
まさに会社を変えていく活動なんですね。
そして、自分自身を変える活動でもあるんですよね。
共同求人=経営者自身と自社の変革ですね!またまた勉強になりました・・・!
私からは教職員と企業との懇談会と学習会の話をしましたが、共同求人の活動はまだまだたくさんあるんですよ。
ハッ!?そういえばそうでした!上原さんのお話でも何度か出てきた合説や講演活動のお話なんかも気になります・・・!一体どんな活動なんですか?まだまだお話聞かせてください!
・・・つづく
株式会社恒栄工業
代表取締役 上原 伸也
設 立:1978年
資本金:5,000万円
事業内容:冷暖房・空調・給排水衛生・リニューアル工事 セントラル及ロードヒーティング工事、ガス工事
従業員数:25名(2019年6月現在)
所在地:北海道札幌市西区二十四軒2条7丁目2番21号